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面白いノンフィクションはこれを読め!【シャドウダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男達】




 Uボートって知ってますか?第二次世界大戦中にドイツ軍が使用していた潜水艦です。アメリカのニュージャージー沖の海底で、知没したUボートをダイバー達が発見したところから物語は始まります。

 今回紹介するシャドウ・ダイバーという本はノンフィクションです。「面白い」なんて言葉では表せないくらい素晴らしい作品に仕上がっています。



 シャドウ・ダイバー概要


 1991年、アメリカのニュージャージー沖の海底で、沈没したUボートをダイバー達が発見した。司令塔は崩れ落ち、船体には大きな穴が空き、大量の人骨が泥に埋もれていた。だが、どの資料を見ても、その海域ではUボートが沈んだという記録は無く、船舶事故すら起きていない。つまり世界中の誰もそこにUボートがあること、その中で眠る兵士達がいることを知らなかった。

 謎のUボート「U-who」に興味を持ったダイバー達は謎を解き明かすために幾度となくU-whoに挑戦する。U-whoで発見した遺物や情報を手掛かりに内外の専門家を尋ねるが、依然として艦名すら判明しない。そんな中、水深70mの過酷な環境のもと死傷者が続出する。

 他のダイバー達が恐れをなして去っていくなか、U-whoに潜り続けるジョン・チャタトンとリッチー・コーラー。彼らはU-whoの名前を明らかにし、それを兵士達の墓標とすることに使命感を抱き始めていた。

 U-whoで眠る彼らは何者なのか、何故そこで人知れず生涯を終えなくてはならなかったのか・・・・

 命を賭してU-whoの解明に挑んだ男達の冒険と感動に満ちたノンフィクション!




レビュー(ネタバレ部分は文字の色をグレーにしています)

 私は戦争関連の本はノンフィクションしか読みません。さらに言えばなるべくなら当人が執筆したものを好みます。なぜなら、他の人間が資料を基に書いた物語は脚色や間違い、憶測等が入り混じってしまうからです。しかし、経験した当人が執筆したものならば記憶違い等はあっても、その人の当時の考えや感情を知ることが出来ます。その様な理由から、私は当人の書いた書物を好んでいます。

 この「シャドウダイバー」は当人ではなく、ロバート・カーソンという人が執筆しています。しかし、彼はこの物語の主役であるジョン・チャタトンやリッチー・コーラーにインタビューを重ねることにより、非常に細かく、また彼らの感情も書き出すことに成功しています。

 また、Uボートの発見から解明までを淡々と書いていくのではなく、途中、ジョン・チャタトンとリッチー・コーラーの生い立ち等について書かれている章もあり、それによって2人の祖先がドイツ系であることが分かります。また、彼らの思想についても知ることが出来、自然と感情移入出来るようになります。

 この物語ではダイビングによりUボートに挑戦しますが、海底から急に水面まで上昇すると人間はどうなるのか、海底で幻覚に陥った者はどうなるのか等ダイビングの知識が無い人でも当時のダイビングの危険が分かるように書かれています。

 また、本書は普通なら読み飛ばしてしまう「出典について」も読む価値があるほどの名作です。「出典について」ではダイビング中の事故の聞き取り調査にも触れられており、著者がいかに詳細なインタビューを行って本書を執筆したかが分かります。

 ただ、文章の構成は素晴らしいのですが、途中にU-whoの情景が描かれる場面があります。これによって、U-whoの乗組員の生存者がいることが分かってしまいます。これによって最後まで読まなくてもU-whoの名前が推測出来るという問題もあります。


映画化

 この物語は今まで幾度か映画化の噂(監督はグラディエーターのリドリー・スコットとも・・・)がありましたが、2017年現在実現はしていません。映画化されればもちろん観ますが、これだけ濃厚なストーリーを2時間程の映画に収めるのは不可能だと思います。

 映画化されれば、ジョン・チャタトンやリッチー・コーラーの生い立ち等は描かれないでしょう。そうなれば本書を既に読んだ人にとって物足りない映画になってしまうのではないかという不安があります(映画「小さな命が呼ぶとき もコンパクトな仕上がりでイマイチでしたね)。せっかくこれだけのストーリーなのですから、映画化されれば嬉しいのですが、薄っぺらい映画なら作らなくてもいいやと思ってしまうほどの名作です。



補足

 私はハードカバー版を持っていますが、ハードカバー版を購入する方は巻頭、巻末にある写真を見てはいけません。ネタバレ要素がありますので、写真を見ないようにして読み進めてください。全て読み終わり、余韻に浸りながら写真を見ることをお勧めします。

 今はハードカバー版は中古しかなく、新品だと文庫本(上下巻)になっているみたいですね。

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